六花の約束

浜に着いて、凜を降ろす。

「蘭、ありがとう」

「いえ…」

俺は、もうこうするしかないと思った。

こうするしか、方法はない。

だから…

「蘭!?」

俺は、その場で土下座した。

「申し訳ございませんでした…!あなたを守ると決めたのに、怪我をさせてしまった」

きっと凜は、俺を許してくれるだろう。

それでも。

これは、俺の意地だ。

凜を守れなかったことに、変わりはない。

「別に、蘭のせいじゃない!あたしが…弱かったから…」

「いいえ。武士に二言はありません。その約束を…私は違えてしまった」

…自分でも、よく言うと思う。

一番大切と言っていい約束を、俺は…俺たちは守れないのだから。

「蘭…顔、上げて…」

「無理です…」

「蘭」

凜の、弱々しい声がする。

応えてあげたいけど、こればっかりは…。

「…蘭。顔を上げなさい……。命令すれば、上げてくれるの?」

…主の命令は、絶対。

俺はしぶしぶ顔を上げた。

凜は俺と目線を合わせるように、しゃがみこむ。

「蘭、自分を責める必要はないんだよ…」

「…いいえ。私はあなたとの約束を、守れない」

すべての、約束において。

「たくさん、約束をしたね。守れない約束も…多かった」

そう言った凜の瞳は、切なさを帯びていた。

…ごめん、凜。

また、俺はお前との約束を破る。

「…凜姫様」

「ん?」

言え、言うんだ。

そうでなければ…俺は…

お前と、ずっといたいと…願ってしまうから。

「…江戸へ、行かせてください」