「父上ぇ、父上ぇ」


 まだ七つばかりの息子が明道の体をゆさゆさとゆする。


 明道はゆっくりと目を覚ました。


「・・・どうかしたか?」


「たまには一緒に蹴鞠をしましょうよ」


 大きく背を伸ばすと、朝から元気いっぱいな息子に感心する。まだまだ成長は止まらぬだろう。


 母に甘えていたい年はまだ過ぎていないだろうに、息子は一人でも平気になっていた。


 無理もない。


 母親はとうの昔に病で死に、ついこの間まで明道も唐の国に出ていたのだから。


 寂しかっただろうに、すまぬことをしたなぁ。


 明道は思ってから立ち上がる。


 しかし、今日と明日は物忌みの期間。


 実のところ、物忌みの期間には外に出ることはおろか手紙すら受け取ってはいけないとされている。