「そう。
別に一緒に暮らしたまま籍だけ外してくれればいいし」
「ちょっと待てっ
父さんだって母さんが好きで結婚したんだぞ?
そんなわがまま…」
「わがまま?
オレだって父さん達が結婚する前から諒子の事が好きだったよ。
父さんが母さんのいる病院に移ったのが2年前だろ?
オレはそれより前から諒子の事見てたんだ。
順番で言えばオレのが先だし、別にわがまま言ってるつもりはない」
「おまえ…
言ってる事が無茶苦茶だぞ…?」
開いた口のふさがらない様子の父親が、やっとの思いで言葉を口にする。
要の言葉は
確かに一理あると言えば、そう言えて…
だけど、こうも強気に、
冷静に言い切ってしまうと
まるで要が正しいようにすら感じてしまう。
「別にさ…
今の家族を壊したいだけじゃないんだ。
諒子が家族を何よりも大事に思ってる事は父さんだって知ってるだろ?
だから、できれば今のままでいたい」
要の言葉に
父親の視線が諒子に向けられて…
諒子が父親と目を合わすと
父親がいつものように笑顔を作った。
…少しぎこちない笑顔を。
「それは…
オレもよくわかってる。
諒子ちゃんがここまで頑張ってくれなかったら今のオレ達はなかったと思う」
「だからさ、
諒子のためにも気まずい状態にはなりたくないんだよ。
父さん達がオレ達を認めてくれたら、全部が上手くいくと思うんだけど」
言い切る要に
父親が頭を抱えて…
表情を歪める。
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