「…要くん?」



要に抱き締められる事を

望んでなかったわけじゃないのに…



いざそうなってみると戸惑う事しかできなくて…



要の名前を呼ぶので精一杯だった。




「…いつも諒子が行くスーパーあるだろ?」



要から発せられた場違いな話題に
諒子が表情を歪める。


そんな諒子に気付いてか
要が言葉を続ける。



「オレ、諒子と家族になる前から諒子の事知ってたんだ。

毎日、あのスーパーで会ってた。


…諒子は知らなかっただろ?」



要の言葉に

諒子がやっとの思いで頷くと要がふっと笑うのが要の胸から響いてきた。



「オレもいつもあのスーパーで買い物してたから。

でも、制服で行くとさ、
なんか周りの目とか気になって…

ちょっとイライラしてた時に諒子を見つけた。


オレと同じように
毎日制服姿で買い物してる諒子を
きっと家庭に事情があるんだろうなって思いながら見てたんだけど…

それなのに諒子はいつも疲れた顔してなくて…


オレは父さんと2人になってからずっと嫌々家事とかしてたから…


なんか、諒子がすごく印象に残ってさ…」



笑みをこぼしながら言う要に

諒子の胸が騒ぎ出す。



いつものざわざわとした不安からじゃない。

罪悪感からじゃない。



少しだけ見えてきた希望に…


心臓がドキドキとテンポをあげる。





「まさか兄妹になるとは思わなかったけど…


だけど

兄弟になって諒子がすごく家族を大切にしてるのが分かったから…


それなら、オレも兄貴でいいと思った。

諒子がうれしそうだったから…



それだけでいいと思ったんだ…」





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