リビングに掛けてある大きな時計の秒針の音が
廊下にまで響いていた。
信じられないほど静かな家に諒子の緊張が高まった時…
要の小さなため息が聞こえた。
「諒子…
離して…
諒子の気持ちに応えたら…
家族がバラバラになる。
おまえが大事にしてきた家族をオレが壊す…
もしそうなったら…
おまえが大事に守ってきたものをオレが奪ったりしたら…
オレは自分が許せない…」
要の手が
要の体を抱き締める諒子の手に触れる。
暖かい要の手に少しピクンと反応した諒子が
震える唇と開いた。
「いいよ…
もういい子でいるのは疲れた…
お母さんもお父さんも大事だけど…
あたしだって自分の気持ちを大事にしたいよ…
ずっと我慢してきたもん…
わがまま…言いたいよ…」
そう言って必死に要の体に抱きつく諒子を
要が無理矢理離した。
要の力の強さが
まるで自分を拒否しているように感じて悲しくなって…
でも
そんな気持ちは次の瞬間消し去られた。
ギュッと諒子を抱き締める要に…
諒子の時間が止まった。
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