玄関に入った途端に

繋がれた手が離された。





電気のつけっぱなしのリビングが

玄関の倒れた傘立てが


要が急いで追ってきてくれた事を教えてくれていた。





「…夕飯、オレ作るから」



何事もなかったかのように言う要の背中を諒子が見つめる。





このまま何も言わなかったら…


本当に何もなかった事になりそうで…








「…諒子?」




諒子が要の背中に抱きついた。





「…振っていいからっ


だから…

なかった事になんかしないで…



嫌いなら嫌いでいいからっ…」






必死だった。




…限界だった。




キレイに振ってくれたらまた家族として見られるように頑張るから―――…




そんな思いで…

要の背中を抱き締める。





要のお腹に回した手が震える。


声が…震える。




それでも離さなかった。



ギュッと…

目をつぶってただ、要の返事を待つ。





「…振るって…

だから…


オレ達は…」



「そんな事が聞きたいんじゃないっ


要くんの…

気持ちが聞きたい…」





黙ってしまった要に…


諒子の心拍数が限界まで速まる。




ドキドキしすぎる心臓に少しめまいがしながらも

要の言葉を待つしかできなかった。





.