後ろ姿だけで誰だか分かってしまって…
いつもの黒いTシャツとカーキのズボンが涙で滲む。
「なんだよ、おまえ…」
10センチくらい高い位置から見下ろす要に
男達が少し焦りながらも文句をつける。
高い身長に、細い体。
見た目は弱そうだが、
要が幼少から空手を続けている事は諒子も知っていた。
大学に入ってからは通わなくなった道場にも
たまに顔を出して汗を流している。
そんな普段の要からは想像できないところも
諒子の恋心をくすぐっていた。
でも…
ケンカは…
諒子が要を止めようと声をかけようとした時
「…他の子で代えが聞くなら他あたってもらえますか?
オレは…
この子じゃないとダメなんで」
自分よりも弱い男達に頭を下げながら要が言った。
そんな要の様子に諒子は戸惑って…
男達は引きつった笑みを浮かべながら歩き出した。
「だっせぇ(笑)
つぅか、何真剣になってんだよ、ばーかっ」
最後にそんな暴言を吐いて背中を向ける。
男達が離れてから
要がゆっくりと頭を上げて…
振り向かずに諒子の手を握った。
「…帰るぞ」
ポツリと言った要に…
引かれる手に…
諒子が表情を歪めながら歩き出した。
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