部屋にひとりになり、もう自力で起き上がることを諦めたぼくは、天井を見つめたまま考えた。

夫人の言うことが本当なら、巡洋艦は沈没した。

そして奇跡的に救出されたぼくは、病院で2日間眠り続け、この家に引き取られてからさらに3日間、この部屋を占領していたことになる。



(沈没したのか……)

あの攻撃を受けて逃げ延びるのは不可能に思えたし、ぼくの意識があるときからすでに船体は傾いていたから、それは何ら不思議ではない。

不思議ではないが、鉄の塊ともいえる、あの雄大な軍艦が今は海の底と思うと、今まで自分がそれに乗っていたという事実が、まるで現実味を帯びてこなかった。

それでいて、現実に体を痛め横たわっているぼくは、夢現を漂う物語の主人公になったようだった。

思わぬ形で主計兵になったことも、磯貝さんとの出来事も、すべてぼくの頭の中だけで起こったことだと言われれば、信じてしまいそうだった。

(けれど、これは夢ではないのだ)

気になるのは、やはり、ほかの乗組員たちの行方だった。

磯貝さんは。

そして、宮崎さんは。