その日もいつもどおりの放課後だった。


美術室からの物音を聞いて、「ん?もうそんな時間か」なんて時計を確認して。


いそいでモチーフの予定の青く透き通ったガラスビンを持って立ち上がる。


扉の前に立った時、ドアの向こうから低い声が聞こえた。


(またか)


最近よく廊下や美術室でこのふたりを見かける。


『これ、プレゼントだよ。欲しがってた本だよ』


『え?でもこんな高いもの貰えません』


『いいんだよ。キミのために買ったんだから』


『キミが読みたいって英語準備室で言ってたから』


『でもそれって吉田先生に持ってるのか聞いただけですから』


『どうせ僕が持ってたって読まないからキミにあげるよ』


(どうやら彼はモノで釣る作戦に出たようです)


『でも、あたしッ――』