密会は婚約指輪を外したあとで


頼りなく歩道を照らす街灯の下、無言でうつむいたまま歩く私へ、ハルくんがそっと声をかける。


「そんなに好きなら、あきらめることもないんじゃない?」

「……え?」

「拓兄の好きな相手は既婚者だよ。そのうち拓兄かあの女か、どちらかの気持ちが冷める可能性もあるでしょ」


報われないこの恋は、終わったと見せかけて、まだ始まったばかりということ?

望みは薄いけれど。気づいたばかりの淡い想いを、もう少しだけ胸に閉じ込めておくことにした。





私の住むアパートの前に着き、送ってくれたことにお礼を言うと

「今度の土曜日、うちに来てくれる? 気晴らしにどこか行こうよ」

ハルくんは屈託ない笑顔で提案した。


「気晴らし……?」

「僕とじゃ不満?」

「そんなことない」


寂しそうな目を向けられて、私は慌てて首を振る。


「じゃあ、可愛い格好してきてね。楽しみにしてるから」