しばらくしてリビングのドアが開き、拓馬が顔を出した。
黒系の仕事着からカーキ色のジャケットに着替えた彼は、一馬さんたちに「出かけてくる」と短く告げ静かに姿を消す。
ハルくんが何やら目配せを送ってきたので、「私、そろそろ帰りますね」と切り出した。
「一馬兄さん、僕が送っていくよ。一花をお風呂に入れなきゃいけないんでしょ」
「そうか? じゃあ悪いけど頼むよ」
笑顔で見送ってくれた一馬さんは、口実を作ったハルくんを不審とは微塵も思っていない様子。
私たちは二人でエレベーターに乗り込み、マンションを出た。
◇
車道に出ると、小さく拓馬の後ろ姿が見える。
地下鉄の駅を通り過ぎ、そのまま飲み屋街の方まで徒歩で行くようだった。
私たちは見失わないように後をつける。
悪いことをしている後ろめたさはあるけど、どうしても真実が知りたい。



