密会は婚約指輪を外したあとで


自分の彼女には、どんな風に接するのだろう。

優しい顔をしたり、甘い言葉を囁いたりするんだろうか。

失礼ながら、そんな想像、全くできない。



「あの、私……」

「何」


素っ気なく一瞥をよこし、拓馬はスマホをチェックし始める。


「私やっぱり、愛人とか無理だから……!」


深入りする前に、と勇気を振り絞って切り出したのに、彼はわざとらしく目を見開いてみせた。


「あんた、あの話、本気にしてたんだ?」

「……え」


喉の奥で堪えるようにククッと笑うので、私はくちびるを尖らせ、心の中で反論する。

女の人に慣れていそうなその外見を見たら、誰だって真に受けると思う。

本気の恋なんてしないで、常に遊んでいそうだし。


「普通に考えて、有り得ないよな。兄貴の女に手を出すなんてさ」


さも当然のように言われて、怒りのあまり、私のこめかみが引きつっていく。