密会は婚約指輪を外したあとで


「別に、今どき離婚するのは珍しいことじゃないだろ」

「それはそうですけど。でも、一花ちゃんが可哀想で」


拓馬さんが何か言おうとしたところで、パスタが運ばれてきて話が中断する。

そのまま彼は別の話を始めたので、結局離婚の理由を聞くことはできなかった。



ダイエットには良くないと思いつつも、モッツァレラチーズとバジルのトマトソースパスタを完食し、私はナプキンで口を拭う。

拓馬さんはタラコの和風パスタをすでに食べ終わっていた。


「拓馬さん、私……」

「『さん』とか付けなくていい」


言いかけた私の言葉を、彼は相変わらず冷たい口調で遮った。


「あんたは一応義理の姉になる予定だし、別に敬語とかいらないから」

「じゃあ、たっくん、とか?」

「は? あだ名を付けていいとは許可してないんだけど」

「……」


ただの冗談だったのに。

なんでこの人、こんなに偉そうなの?

最初から『拓馬って呼んで欲しい』とお願いしてくれれば、まだ可愛げがある気がする。