一馬さんに子どもがいたなんて――。
あんなにも簡単にプロポーズまがいのことをしてきたのは。
正直、小さな娘のために早く奥さんを見つけたかっただけとしか思えない。
私じゃなくても、誰でも良かったんだ。
もしかしたら、他の女の人にも手当たり次第プロポーズしていることも考えられる。
たまたま今回は私がOKしていただけで。私がダメなら、きっと次の人も用意しているんだろう。
エレベーターで1階に降り、淡いライトに照らされたマンションのエントランスに着く。
ふと顔を上げると、自動ドアの向こうには見たことのある背の高い人がいた。
3兄弟の真ん中、拓馬さんだ。
オートロックが解除されたようで、微かな音とともに自動ドアが開く。
二人を隔てるものがなくなり、うつむきがちに立ちすくんでいると、向こうがゆっくりと近づいてきた。
泣きそうな顔、気づかれないといいけど。
「……あんた、誰だっけ?」



