拓馬は意外そうに目を見開いたあと、ためらいがちに私を抱きしめてくれた。
外気で冷えた腕を背中に感じ、本当に彼が帰ってきたのだと実感する。
「拓馬……無事だったんだね」
「ごめん、ちょっと人命救助の手伝いしてたら、スマホが洪水で流されて。しばらく連絡できなかった」
全然連絡がないから、心配しすぎてご飯も喉を通らなかったというのに。電話が壊れていただけだったなんて。
「悪かった。停電がおきていたし、他のスタッフの電話も充電できなくて」
「怪我は……?」
不安になって拓馬の顔を見上げると、すっと視線を外された。
「怪我はかすり傷で大したことない。ただ、一回洪水に巻き込まれそうになったことがあって」
「え……?」
「もう駄目かなと思ったとき、頭に浮かんだのは奈雪の顔だった。あんたにもう一度会うまでは死ねないって思った」
私の前髪へ、控えめに触れる拓馬。
なぜか顔色がすぐれない。



