密会は婚約指輪を外したあとで


扉を閉めた彼が私へ視線を留め、一歩ずつ近づいてくる。

バージンロードを踏んではいけないのを忘れ、私も彼のそばへと近づいていった。


以前の自分なら“この短期間で彼はもうすでに、他に好きな人を見つけてしまったかも”と後ろ向きに考えて、相手の出方を見てから行動していた。

相手が自分のことを好きだと言ってくれなければ、絶対にこちらからは好きと言わない。


たとえば女同士でもそう。

相手が自分に対して少しでも好意的な雰囲気がないなら。絶対に自分から話しかけることはなかった。

……でも。自分がどうしたいか。たまにはそれを優先させる勇気を持ちたい。

勝手に誤解したまま、マイナス思考に過ごすのは勿体ない。



私は感情のまま彼に走り寄り、ぶつかる勢いで抱きついた。

日溜まりを思い起こす、懐かしいシャツの匂いも。

憂いを帯びた、猫のようなはっきりとした瞳も。


彼の存在が確かにここにあると示してくれていた。