ホテルのロビーへ繋がる広い廊下に出ると、柱の陰で誰かと電話をしている一馬さんの姿が見えた。
「え……拓馬が?」
一馬さんの深刻そうな横顔と低い声音に、胸のざわつきを感じる。
通話を終えた一馬さんが振り返り、私と目が合った。
「一馬さん……。拓馬に何があったか分かったんですか?」
「いや。大丈夫。何でもない」
深刻な目をそのままに、一馬さんは私から視線をそらす。
「何ですか? はっきり言って下さい、気になります」
やや強めの口調で問い詰めると、一馬さんは観念したように息を吸い込む。
「拓馬が……見つかったよ」
ゆっくりとした彼の言葉に、私は咄嗟に耳を塞いでいた。
『遺体で発見された』なんて、嘘でも聞きたくない。
一馬さんは耳を塞ぐ私の両手をそっと外し、「そこのチャペルに行っておいで」と柔らかい口調で促した。
「きっと、なゆちゃんの大事な人は現れるから」



