密会は婚約指輪を外したあとで

「これさ、ちゃんと考えてみてよ?」


折り畳んだ求人情報を私に押しつけ、ハルくんは伝票を手に取り立ち上がった。


「……ちょっと待って」


ふと疑問に思い、私は彼を引き止める。


「どうして、ハルくんがこれを持ってるの? 一馬さんに何か言われた?」


いつまでも再就職しない私に、一馬さんが焦れて仕事を探してくれたのだろうか?


「違うよ。拓馬兄さんだよ」

「拓馬が……?」

「昨日、拓兄の部屋を覗いてみたら、テーブルにこれが置いてあるのを見つけて。
なゆさんのこと、全然気にしてないふりして、意外と真剣に考えてるんだなって思ったんだ」


目尻に溜まった涙を、ハルくんに悟られないよう素早く拭う。


どうして、私が目指そうとしているものがわかったんだろう。

それだけ私のことを見ていてくれていたという証拠なのに、何も気づいていなかった。