密会は婚約指輪を外したあとで




翌日。呼応するかのように、私の住む街も強雨が降り続いていた。


その夜、拓馬からメールが1件だけ入った。

取材中、豪雨の影響で村が孤立し、しばらく戻れなくなったと──。


心配して掛けた電話も全く繋がらず、メッセージアプリも既読にならず。ついには連絡が途絶えてしまった。


拓馬の会社である局のチャンネルを常にチェックしていても、ニュースには全く姿を現さない。


そして二日後の夜、私にかかってきた電話の声は拓馬のものではなく、一馬さんの声だった。


『なゆちゃん、落ち着いて聞いてくれる?』


深刻な声音が電話の奥から聞こえてきて。
私は思わず背筋を伸ばし、スマホを持つ手を強張らせながら耳を澄ませた。


『拓馬が……行方不明になったんだ』


行方不明、という普段使い慣れない言葉に息が止まりそうになる。


「え……? どういう、ことですか?」

『ごめん。詳しくは何もわからない。また情報が入ったら、なゆちゃんにすぐ連絡するから』


電話が切れたあと、テレビをつけ、ニュースを食い入るように見ていると、川が氾濫し流された人もいるようだった。


もしそれが拓馬だったら……。

そう考え始めれば、いつまで経っても寝つけなかった。