密会は婚約指輪を外したあとで

「本当は今日、奈雪とずっと一緒にいるつもりだったのにな」


それってもしかして……。

言葉の意味に気づいた途端、頬がじんわりと熱を持つ。


「悪いな。仕事が片付くまで待っていてくれるか?」

「うん……待ってる」


もっと一緒にいたくて、引き留めたい気持ちはやまやまだったけれど、外せない仕事なら仕方がない。


「俺のいない間に、兄貴やハルにたぶらかされたりするなよ?」


案外、心配性な所もあるのか。私の手をつかんだ彼は、眉をひそめながら顔を近づける。


「大丈夫だよ。拓馬も気をつけてね」


そのまま軽くキスをして、名残惜しげに手を離した拓馬は、私を残して職場へ向かって行った。