いつの間にか日が沈みかけ、ビルの谷間から覗く空に、淡いオレンジのグラデーションができていた。
「さっき龍之介さんに抱きしめられてたけど。ちょっとは良いなとか思った?」
私の手を引いて歩いている途中、前に視線を向けたまま拓馬は聞いてくる。
相変わらず表情は不機嫌なままだ。
「別に、何も思わなかったよ」
ほんの少しドキッとしただけで。
今、拓馬と手を繋いでいることに比べたら緊張の度合いが違いすぎる。
「……奈雪」
拓馬が私の名前を呼んだとき、不意に着信音が鳴り響いた。
私の手を離した彼は、着信相手を確かめたあと電話に出る。
「え、これからですか」と聞き返していたので、私は嫌な予感がしていた。
電話を切り、拓馬が私に向き直る。
「取材が入った。豪雨の影響でしばらく帰って来れないかもしれない」
「……え?」



