私はその手を振り払い、頬に零れる涙を拭う。
「渚さんのこと……好きなの?」
「いや、好きなわけじゃない。前に二股はしてないって言ったよな?」
「じゃあ、どうして渚さんのこと抱きしめてたの」
「それは──」
何か言いかけた拓馬を遮るように、よく通る声が辺りに響いた。
「渚、これはどういうことだ?」
何事かと、通りすがりの観光客や散歩中の人々が振り返る。
「どうして拓馬と抱き合っていた? 最近、ずっとあいつと一緒に行動していたのはなぜだ?」
赤いテレビ塔の真下で、二人は向かい合う。
渚さんは強い眼差しで龍之介さんのことを見上げた。
「龍之介は結婚してから、私に全然構わなくなったじゃない。仕事で忙しいのはわかるけど、私は早く子どもが欲しかったのに、龍之介は子どもが苦手なせいもあって、子作り拒否。全く協力してくれなかった……」
「なっ、馬鹿、そんなことは大きな声で言うものじゃないだろう」
龍之介さんが焦って口を塞ごうとするも、渚さんは気にせず続ける。



