拓馬に抱きしめられている妻を目撃し、さっきまで自信満々だったはずの龍之介さんの顔が一気に青ざめる。
「俺が先に行って話をつけてくる。君はここで隠れていた方がいい」
龍之介さんは自分の見たものが信じられなかった様子で、動揺を押し隠し、私を木の陰で待っているよう言い聞かせた。
私はもはや返事もできないくらいに呆然としていた。
木陰ではよく二人の様子が見えなかったため、無意識のうちに足が前へ出る。
ショックと怒りのオーラを隠しきれない龍之介さんは、二人の元へ歩み寄り声をかける。
ゆっくりとこちらを振り返る二人。
龍之介さんの肩越しから、ぼろぼろに涙を流した私と目が合い、拓馬の目が見開かれる。
どうして奈雪も一緒に?と言いたげだった。
「奈雪!」
呼び止める声を振り切り、逃げ出した私。
失恋を決定的にさせる真実は、これ以上知りたくなかった。
けれど、途中でふと思い直す。
このまま、逃げるだけでいいの?
後悔しない?
自分で自分に問いかける。
足を止めて振り返ると、追いかけてきた拓馬が私の手首を掴んだ。



