密会は婚約指輪を外したあとで

ゆっくりと私がうなずくと、拓馬は安堵したように小さく息を漏らした。


「良かった……」


“良かった”ってどういう意味?

拓馬も私と同じ気持ちだと思っていいの?


一歩足を踏み出した拓馬が、私をためらいがちに抱きしめる。

一馬さんが見てるのに、と焦って彼の姿を探すけれど。一馬さんはいつの間にか姿を消していて、私と拓馬だけが取り残されていた。



「あのさ、観覧車の中で…………いや、やっぱりいい」

「何? 気になるよ。言って?」

「……だから、」


苛立ったように言葉を途切れさせた拓馬は、身を屈め私に顔を寄せた。


「兄貴に、こんな風にされてないだろうな」


微かに触れる甘いキスに胸が高鳴る。


「……されてないよ。一馬さんは楓さん一筋みたいだから」

「それはどうだかな」


拓馬は首を傾けたあと、思い出したように付け加えた。


「ま、確かに本気で奈雪と結婚するつもりはなかったのかもな。あの婚約指輪のダイヤ、偽物だったし」

「──えっ。偽物!?」


驚きのあまり、大声を出してしまう。