観覧車から降りるとき、一馬さんはさりげなく私の手を引いてくれた。
降りたあともそのまま手を繋ぐ形になり、私が指の力を抜いても一馬さんの手のひらはしっかりと私の手を握ったままだった。
「あの……」
手を離してもらえないかと、一馬さんを見上げたとき。
「──もう、良いですか」
前方から、よく通る声が投げかけられた。
それは拓馬の低い声だった。
走ってきたのか少し息を切らしていて、いつもは整っている髪形も今は風で乱れている。
もしかして、私を迎えに来てくれた……?
一馬さんとのデートは一日中という約束だったけど、まだ2時間ほどしか経っていない。
さっき観覧車の中で一馬さんがメールを打っていた相手は、実の弟だったようだ。
「充分、満足できたよ。思い残すことはない」
口元に笑みを浮かべた一馬さんは、握っていた私の手を解放する。
拓馬は奪い取るように私の肩を引き寄せ、堂々と手を繋いだ。
そして私の左手を持ち上げ、指輪がついていないか確認する。
「指輪は返したんだな」
「……はい」
「婚約は解消したんだよな?」



