今は、私と拓馬の関係よりも優先させるべきことがある。
「あの。一馬さん、ちょっと良いですか」
「いいよ。……何?」
「一馬さんは元奥さんのこと、まだ好きなんですよね」
伏せられた写真立てを見なかったら──、一花ちゃんから“パパが毎日ママの写真を見てる”という話を聞かなかったら、気づかなかったかもしれない。
「本当は、楓さんとよりを戻したいと思っているんですね」
「……嫌だな。この前、なゆちゃんに婚約指輪をあげたばかりだよね?」
白々しい笑顔を張りつけ、一馬さんはネクタイを外した。
「それに、楓は付き合っている男がいるみたいだし、もう関係ないんだよ」
自嘲するように彼は目を伏せる。
「なゆちゃん、あの約束は覚えてる?」
「……はい」
ゆっくりと私はうなずく。
契約違反をしたら、一馬さんと一日中デートという約束だったはず。
「拓馬……、一花は楓のところに泊まっていくって連絡があった。このあと、なゆちゃんのこと借りるから」
一馬さんはそう言い捨て、私の手を取り玄関へ向かった。
黙ったまま私たちを見送る拓馬は、私が視線を向けても全く追いかけてくることはなかった。
「あの。一馬さん、ちょっと良いですか」
「いいよ。……何?」
「一馬さんは元奥さんのこと、まだ好きなんですよね」
伏せられた写真立てを見なかったら──、一花ちゃんから“パパが毎日ママの写真を見てる”という話を聞かなかったら、気づかなかったかもしれない。
「本当は、楓さんとよりを戻したいと思っているんですね」
「……嫌だな。この前、なゆちゃんに婚約指輪をあげたばかりだよね?」
白々しい笑顔を張りつけ、一馬さんはネクタイを外した。
「それに、楓は付き合っている男がいるみたいだし、もう関係ないんだよ」
自嘲するように彼は目を伏せる。
「なゆちゃん、あの約束は覚えてる?」
「……はい」
ゆっくりと私はうなずく。
契約違反をしたら、一馬さんと一日中デートという約束だったはず。
「拓馬……、一花は楓のところに泊まっていくって連絡があった。このあと、なゆちゃんのこと借りるから」
一馬さんはそう言い捨て、私の手を取り玄関へ向かった。
黙ったまま私たちを見送る拓馬は、私が視線を向けても全く追いかけてくることはなかった。



