密会は婚約指輪を外したあとで


「なゆちゃん、居るの?」


玄関の方から一馬さんの声がして、拓馬はサッとベッドから下り私のそばから離れる。


「──拓馬、なゆちゃんは……」


ノックとともに部屋のドアを開けた一馬さんは、弟のベッドに座った状態の私に気づき目を見開いた。


「拓馬……これはどういうこと?」

「え、別に? 話をしていただけですが?」


平然と拓馬は答え、私は慌ててベッドから下りる。


「兄貴、帰ってくるの予定より早かったんだな?」

「なゆちゃんが心配で、子守を理由に電車の時間を一本早めて帰宅させてもらったんだ」


一馬さんは私と拓馬へ交互に視線をやり、僅かに首を傾けた。


「で、やっぱり二人は、俺に内緒で付き合ってたってことでいいのかな」

「…………」


拓馬は否定も肯定もせずに、自分の兄から視線をそらす。

その代わりに、私は一馬さんの目の前に立った。