密会は婚約指輪を外したあとで


「一馬さんに皆の部屋には入らないでと言われているから、やっぱり私、出ないと」


ドアノブに手をかけ部屋を出ようとするのを、拓馬が私の二の腕をつかみ阻止する。


「それ、何で駄目か知ってる?」

「知らないです……」


拓馬は知ってるの?

そう目で聞くと、彼は薄く笑い、私との距離をさらに縮めた。


「例えば。あんたが、こんな風にされたら困るからじゃない?」


急に抱き上げられた私の体。

窓際に置かれたベッドの上にふわりと降ろされる。

何が起きたのか分からない私は、組み敷くように覆い被さる彼をただ見上げるばかり。

この広い家の中──しかも好きな人の部屋で二人きり。

本当なら、ドキドキしながらも喜ぶべきシチュエーションのはず……。

拓馬はなぜかリモコンで音楽のボリュームを上げたので、ますます危機感を覚えてしまう。


「あのっ、私、実は……最後まで経験なくて」


この際、正直に言ってしまった方が、この危機的状況を回避できるかも。と思いカミングアウトする。

彼は特に驚いた様子も馬鹿にした様子もなく聞き返した。


「途中まではあるってこと?」


私は赤くなりつつ頷く。


「途中までって──どこまで?」


意地悪な目をした彼は、指の背を使い私の顎のラインをなぞる。

そんなの、恥ずかし過ぎて言えない……。