楓さんと一花ちゃんが出かけてしまい、用済みになった私は「もうすぐご飯の準備ができるから、それが終わったら帰るね」と拓馬へ告げる。
「別に兄貴が帰ってくるまで居てもいいけど?」
リビングでパソコンを操作していた拓馬は、こちらを見ずに背を向けたまま返事をした。
思いがけず許可が出て、特に断る理由もないので彼の言葉に甘えることにする。
それに、今日こそは渚さんとの関係をどうするつもりなのか、はっきりさせたかった。
私も一緒に軽く夕食を済ませ、壁時計を確認すれば、まだ19時過ぎ。
一馬さんが帰ってくるまで、3時間弱あった。
「ちょっと、こっちに来て」
「何……?」
私の手を引いた拓馬は、廊下の奥から2番目の部屋へ招き入れる。
一馬さんに“兄弟3人の部屋に入ってはいけない”と釘を刺されたことを思い出したのは、ドアが完全に閉まった後だった──。
初めて入った拓馬の部屋は、モノトーンの色調で整えられ、すっきりとしたインテリアだった。
拓馬は本棚の上にあるシルバーのオーディオのスイッチを押し、洋楽を流す。



