密会は婚約指輪を外したあとで

一花ちゃんの隣に座り、サラサラの細い髪の毛を優しく撫でる。


「綺麗だね。ママ、幸せそうに笑ってる」


今ここにいるのが自分でなく、楓さんなら。どれだけこの子は幸せでいられるのだろう。


「しわわせ?」


首を傾げた一花ちゃんは、写真の中の楓さんに視線を向ける。


「しあわせ……パパと一緒にいられて嬉しいってことだよ」


幸せの意味を子どもに伝えるのは難しい。

何となく意味が理解できたのか、一花ちゃんは微笑んで、他のページも開いて見せてくれる。

チャペルでの指輪交換。ケーキ入刀や花嫁の手紙を読む披露宴の様子。

黒と赤の大人びた雰囲気のカラードレスを身に纏った楓さんは、モデル並みに美しい。

そのアルバムには、幸せな頃の姿がいっぱい詰まっていた。


「いちか、いないね」


ふと、一花ちゃんはつぶやき、寂しそうに顔をうつむける。


「そうだ……、まだ産まれてないからだね。一花ちゃんの赤ちゃんのときの写真はないのかな?」


本棚へ目を向けると、アルバムが何冊か並んでいるのが見えた。

その隣の雑貨が飾られている棚に、伏せられた写真立てが一つある。


いつか一馬さんに、見るのを咎められた写真立てだ。