そんなハルくんを放っておけない気分になった私は、ソファに座る彼の隣に寄り添い、優しく髪を撫でる。
「私がもしハルくんのお母さんなら。離れ離れになったとしても、毎日会いたいと思うよ。ハルくんのお母さんも、きっとそうなんじゃないのかな」
「何、言ってんの……?」
疑心に満ちた目で、彼は私を探るように見つめる。
「だってこんなに可愛い子なのに。手放すなんて、よっぽど深い事情があったとしか思えないよ」
「事情なんて大してないって。あの頃、喧嘩ばっかりしてたし、お互い嫌い合って別れただけだよ。子どものことなんか、どうでも良くなったんじゃない? みんな、結局自分の幸せが一番大事だよね」
彼の握り締めた拳に、私は手を重ねる。
「……強がらないで、ハルくん。寂しいなら寂しいって言ってもいいんだよ? 言わないと伝わらない。もしかしたらお母さんも、ハルくんに会いたいけど我慢しているだけなのかもしれないよ」
顔を歪めたハルくんは、隣に座る私を痛いほど強く抱きしめてきた。
彼が顔をうずめた左肩に、温かい水滴が落ちる感触がある。
「なゆさんが、俺の母さんだったら良かったのに」
静かに涙を流すハルくんは、いつもの小悪魔さは欠片もなく。
ただの、一人の少年だった。



