密会は婚約指輪を外したあとで


「なゆさん、今までどんな男と付き合ったの?」

「……えっ?」


ハルくんは軽々しく答えられない質問を、平然と投げつけてくる。


「なゆさんは遊び人より、真面目なタイプが似合いそうだね?」

「う……うん、そんな感じかも」


過去に付き合った人数は多くないので、返答を濁しておく。


「じゃあ。当然、キスの経験もあるよね?」

「……!」


とんでもない質問を追加してくるので、焦ってチキンライス用のケチャップを、思いきり出し過ぎてしまった。


くすくすと笑われながらも、オムライスが出来上がり。テーブルに並べると「美味しそう」と目を輝かせるハルくん。

「いただきます」と言って手を合わせたあと、よっぽどお腹が空いていたらしく、あっという間に完食してくれる。

自分の作ったものを満足げに食べてもらえることが、こんなにも嬉しいだなんて知らなかった。


「ごちそうさま。美味しかった」

「全部食べてくれてありがとう。ハルくんのお母さんほどの味ではないと思うけどね」

「母さんの味……あんまり覚えてないな」


ハルくんは記憶を辿るように宙を見つめる。


「お母さんには時々でも会えてるの?」


麦茶をグラスに注ぎながら、私はそっと訊いてみる。


「最近は会ってないよ。再婚相手と忙しいから僕らに構ってる暇ないみたい」


全然寂しくはなさそうに、ハルくんは投げやりに答えた。


「再婚、したんだ……」

「別にいいけどね。母さんがいなくたって生きていけてるし」


彼の赤いくちびるへ、ほんの僅かに笑みが乗る。

けれどそれは、ただ強がっているだけに見えた。