密会は婚約指輪を外したあとで

重なったくちびるを一旦離し、私の顔の横に片手を置いた拓馬は冷たい視線で見下ろしてきた。


「……あいつにカラダ、触らせるなよ」


極限まで低い声で文句を言ったあと、また強引にくちびるを奪う。

私と彼の手のひら同士が合わさり、指が絡み合う。

もっと彼と繋がり合いたくて、五本の指に力が入る。


怒られているはずなのに、なぜか嬉しさが込み上げた。

ほんの欠片ほどでも、嫉妬してくれている気がしたから。


「でも……背中の辺だけだったし、服の上からだよ?」


一瞬くちびるが離れた隙に、少しだけ反抗を試みる。

正確にはもっと下の、腰の位置を触られたのだけど。


「それでも駄目だ、言い訳すんな」


シートが倒され、苛立ちをぶつけるかのように激しく口内を弄ばれる。


「待って……もう、ダメ。苦し……」


涙目になった私は、そう言い逃れをした。

本当は苦しいのではなく、その逆で。
自分がどうにかなってしまいそうなほど、彼に溺れていたのだ。


私が荒く呼吸をしていると、彼はふと我に返ったのか、私から離れ運転席へ体を戻す。

ヘッドレストへ頭を預け、額に手の甲を置いた拓馬は、一つ、深く息を吐いた。