密会は婚約指輪を外したあとで

噴水で引き続き遊ぶ一花ちゃんの小さな背中。

この重苦しい雰囲気に気づいているのかいないのか、ポロポロと降ってくる水の粒へ手を伸ばしていた。


「少し安心した……。一花に新しいママができるなら、心置きなく次へ進めるかな」


そう言って微笑んだ楓さんの視線は、私の薬指の婚約指輪に注がれていた。


「実は。私も最近、付き合い始めた人がいるの」


それを聞いたとき、私の腰に添えた一馬さんの手が、一瞬震えた気がした。

よく見れば楓さんの細長い指にも、シルバーかプラチナの指輪が光っている。

私に対して刺すような厳しい視線を投げていたから、まだ一馬さんに未練があるのでは、と思いきや。

楓さんにはすでに、付き合っている人がいたとは。


この展開は一馬さんの望む通りなのか。私にはわからない。

ただ、これまでとは環境が変わり、一花ちゃんは今よりもっと、ママに会えなくなるのは確実だった。