水遊びに夢中だった一花ちゃんは、二人が近づいてきたことに気づき顔を上げた。
そしてパッと顔を輝かせる。
「ママー‼」
私の手を離した一花ちゃんが、満面の笑みで女性に駆け寄り、勢いよく抱きつく。
「一花ちゃんの……ママ?」
女性の正体は一花ちゃんのお母さんだったと知り、私は深い溜め息をもらしてしまうほど、安堵していた。
つまり一馬さんの元奥さんということなのだから、偽嫁の立場の私としては複雑ではあるけれど。
「あの人は楓さん。一馬兄さんと離婚した人」
小さな声でハルくんが私に耳打ちする。
楓さんは私にも会釈をしてきたので慌てて頭を下げた。
一花ちゃんとお母さんはしばらくベンチで会話し、会えなかった時間を共有したあと、水遊びを始めた。
すっかり私とハルくんは蚊帳の外だ。
一花ちゃんとここ数日で距離が近づいたとはいえ、本当のお母さんには敵わないと思い知らされた。



