密会は婚約指輪を外したあとで

「迷ってるならやめた方がいい。兄貴のことが本当に好きってわけじゃなく、ただ早く結婚がしたい、とかいう動機なら尚更な」


黒く艶のある瞳で間近から見つめられ、ずるい自分を見透かされた気分になる。

彼の言うことはほとんど当たっている。

もしも今日、拓馬への告白が失敗したら、一馬さんのプロポーズを受け入れようと思っていた。

一馬さんと結婚し家族になりさえすれば、義理の弟となる拓馬との繋がりは消えないから。

そうまでしても、拓馬の近くにいたかった。


「あー、頭痛くなってきた」


突然拓馬は下を向き、こめかみの辺りを押さえる。


「どうしたの、大丈夫?」


知らないうちにお酒を飲み過ぎていたのだろうか。でも、まだ2杯しか飲んでいなかった気もする。

心配になった私は、彼の腕に手を添え覗き込んだ。


「兄弟と取り合いって……何やってんだ俺」


掠れた低めの声は、私の耳にはほとんど届かない。


「具合悪いの? お水飲んだ方がいいよ」


長めの前髪の隙間から覗くはっきりした二重の目が、私を睨むように射抜く。