密会は婚約指輪を外したあとで

「で、相談って何」


ある程度食べさせ終えて満足したのか、拓馬は急に本題に入ろうとする。


「相談というか、あの、私……」


言葉を途切れさせた私は、まだ告白をする心の準備が整っていなかった。

ここは一旦、別の話にすり替えるしかない。


「拓馬は結婚願望がないって聞いたけど、本当なの?」

「結婚? 特にしたいとは思わないね」


淡々とした返事を受け、告白しようと決意していた気持ちが急速にしぼんでいく。

それはつまり、もし私が拓馬と付き合えたとしても、結婚は考えてくれないということだ。

そのとき、扉をノックする音が聞こえ、最後の料理が運ばれてきた。


「ご注文のお品は全てお揃いでしょうか?」と店員さんの張りのある声が響く。

「……はい」

「では、ごゆっくりお過ごしください」


笑顔の店員さんが下がり、追加注文をしなかったことで、ここからは完全に二人きりの空間に変わる。

こちらが呼ばなければ、誰かが部屋に入ってくることはまずない。


「あんたの相談なんて、どうせ兄貴との結婚のことだろ」


残り少ないビールを流し込み、低い声で決めつけた拓馬は、なぜかどんどん不機嫌になっていく。