密会は婚約指輪を外したあとで

確かに、一花ちゃんに母親代わりが必要なのはわかるけれど……。


「本当は、この先もずっと──そばにいて欲しいと思ってる」


一馬さんの大きな手のひらが、私の右の頬にかかり。
親指でそっと私のくちびるをなぞった。


「……好きだよ、なゆ」


今まで彼のことはお兄さんのように思っていて、それほど異性として意識していなかったのに。
そんな言動をされると戸惑うし、変にドキドキしてしまう。

どうやって切り抜けようか迷っていたとき──。


「兄貴、一花が泣いてるみたいだぞ」


突然、リビングに拓馬が入ってきて、私は心の底から安堵した。

すばやく一馬さんから離れ、何事もなかったかのように髪の乱れを整える。

今の、拓馬に見られていなかっただろうか。