「お邪魔します……」
入ってはいけないと言われていた一馬さんの部屋に、簡単に足を踏み入れてしまって大丈夫なのだろうか。
ドアが閉まる直前、リビングの向こうで拓馬がこちらを見ていた気がした。
青いカーテンと白いベッド。
単行本の並べられた本棚。
綺麗に片づけられたシンプルな部屋は特に怪しい物も置いていないし、何の問題もなさそうに見える。
「なゆちゃん、たった1日ですごく綺麗になったよね。見違えたよ」
「そうですか? ありがとうございます」
私はできるだけ小声で喋る。
壁一枚向こうに拓馬がいる、この状況はとても気まずい。
彼の方はすでに他人に戻っているとはいえ、落ち着かない。
「俺たち、恋人同士のフリはしてたけど、恋人らしいことは特にしてなかったよね」
言われてみれば、手を繋いだことはあるけれど、他には何もしていなかった。
むしろ弟の拓馬との方が恋人っぽいことをしている気がする。
手の甲とはいえキスをされてしまったし……。



