密会は婚約指輪を外したあとで

「ほんとは抱きしめたいけど、そんなことしたら止まらなくなりそうだから、やめておく」


アルコールが入っているせいなのか、妙に素直な彼の言葉。

真っ赤になって戸惑っているはずの、自分の顔。

それを見られたくなくて、私はただうつむいていた。





佐々木家のリビングに入ると、一馬さんだけがいて、私たちへ麦茶を出してくれた。


「なゆちゃん、遅かったんだね」

「心配かけてごめんなさい」

「あとで俺の部屋に来てくれる?」


一馬さんに自室へ呼び出されるなんて、初めてのことだ。何か嫌な予感がする。


「でも、一花ちゃんは?」


何とか逃れる術がないかと頭を巡らせるが、一馬さんは「大丈夫」と微笑んだ。


「一花なら、ハルが一緒に寝てくれてるから」


拓馬へ視線を送り助けを求めたのに、目も合わせてくれない。

家に戻ってからの拓馬は、普段どおり私とは距離を置いていた。

一馬さんの弟という立場を守り抜いている。