密会は婚約指輪を外したあとで

どこまで本気なのかわからない拓馬の言葉に、どう返事をしたらいいものか悩む。

遊びのつもりなのか気まぐれなのか……。

それに、人妻のあの子のことは?

私と付き合ったからといって、すぐに忘れてくれるのだろうか。

二股のまま平行線ということだって、大いにあり得る。


「秘密で付き合うってのに罪悪感があるなら、俺のペットにでもなれば」

「ペットは嫌です」


即答する私を見下ろし、拓馬は面白そうに笑いをかみ殺している。

ふいに、白く輝く月が黒い雲に隠されていった。

それと同時に拓馬の笑顔も消える。


「もし兄貴の彼女じゃなかったら……俺と付き合ってた?」


真顔での問いかけに、私は小さく──ほんのわずかに頷いた。

どこかホッとしたように肩の力を抜き、目を細める拓馬。


“好き”とは口にできないけれど。頷くくらいなら私にもできる。冗談だと笑われたら、お酒のせいにしてしまえばいい。

からかうつもりはないのか、彼は私の頬の辺りを優しく撫でた。