密会は婚約指輪を外したあとで


追加で注文したお酒がいつの間にか届いていて。テーブルに片肘をついた拓馬は私のことをじっと見ていた。

どこか熱を帯び、色気を孕んだ視線。


「な……何?」


彼の腕が伸び、私の右手を捕まえる。

手の甲に熱い吐息がかかったと思ったら。そっと、そこに柔らかいくちびるが押し当てられていた。


「あんたのこと奪ったら、兄貴はどう思うんだろうな」


頬に睫毛の影ができ、綺麗だった。

憂いを帯びた瞳は、とても冗談を言っているようには見えない。


「……酔ってるの? 何だかいつもの拓馬じゃないみたい」


そういう自分もお酒が回ってきたのか、ふわふわして変な気分だ。

一馬さんとの契約を破って怒らせることになったとしても。

もっと拓馬に触れて欲しい。

──そう、願ってしまう。


しばらく見つめ合ったままでいると、彼がゆっくりと顔を寄せてきた。