密会は婚約指輪を外したあとで

常に強気な彼が、後悔?

それって。少しは私のことを異性として意識してくれているということ?


叶多さんから一馬さんを紹介してもらったあの日。

本当なら、初めに親しくなれたのは、拓馬の方だったかもしれないんだ。

うまくいけば、付き合えていたかもしれない……。


「……なんてな。短期間で結婚を前提に付き合うようになったってことは、よっぽど兄貴と相性が良かったんだろうな」


真剣だったはずの彼の視線が外れたので、緊張から抜け出した私はホッと息をつく。

危うくさっきの言葉、本気にする所だった。

まさか彼が、何の取り柄もない私に惹かれるはずがない。


拓馬が追加で飲み物をオーダーしているとき、テーブルに置いていた私のスマホがわずかに振動する。

画面を確かめると一馬さんの名前が表示されていた。

一瞬迷ったものの電話には出ずに、電源をオフにしてしまう。

──終わりが近づいている、拓馬との貴重な時間を邪魔されたくなかったから。