密会は婚約指輪を外したあとで


注文したカクテルで乾杯し、しばらく沈黙が訪れる。

大きな鋭い目を若干伏せた拓馬は、オレンジ色に輝く夜景へ視線を落としていた。


薄暗い照明の中、黒い瞳が潤んでいるかのようにキラキラと揺らいで見える。

彼の横顔をこんなに間近で観察したのは初めてで。

幸せだと思う一方で、こんな機会はもうないのではないかと沈んでしまう。


「ねえ……拓馬。全然こっち見てくれないけど、どうしたの? 何か怒ってる? 私、そんなに変かな」


思ったほど変わらなくて期待はずれをしたのだろうか。

せっかく美容室代も洋服代も出してくれたのに、申し訳ない気分になってくる。

拓馬は一口カクテルを飲んだあと、今度は私をしっかりと正面から見てくれた。


「俺、ちょっと後悔した。あの日、叶多の紹介断って──兄貴をあんたに会わせたこと」