冬の匂いがする海岸は、半年前の暑さが嘘のように寒い。


沈んでいく太陽が少しずつ朱く染まり始め、キラキラと輝く海面もオレンジ色に染めようとしていた。


「渚(ナギサ)!」


背中から飛んで来た愛おしい声に、満面に笑みを浮かべながら振り返る。


「雪(ユキ)ちゃーん!」


手を大きく振ってそう呼べば、雪ちゃんも手を振りながら走って来た。


彼は、中条雪緒(ナカジョウユキオ)。


あたしの事を優しい笑顔で見つめてくれるだけで心の中をポカポカと温かくしてくれる、誰よりも大好きで何よりも大切な人。