あの日――。


あの直後に下腹部が激痛に襲われたあたしは、すぐにお兄ちゃんに病院に連れて行かれた。


そこで医者から告げられたのは、あたしのなかに新しい命が宿っているという事だった。


それは、雪ちゃんと最後に抱き合ったあの時に芽生えた、小さな命。


海に入った時にお腹に痛みを感じたのは、そこに新しい命が存在していたからだった。


極寒の海で命を捨てようとしたあたしを救ってくれたのは、雪ちゃんと彼が残してくれた新しい命。


全てを諦めようとしていたあたしの元に、二つもの奇跡が舞い降りて来たんだ……。