「ママー!」


あの日、あたしにはもう一つの奇跡が舞い降りたから……。


「みて〜!ほら、きれいなかいがらでしょ!」


得意気に笑って手の平を広げた六花(リツカ)に、自然と浮かんだ笑みを返す。


「うん、綺麗だね」


「まっしろなの!」


「本当だ、雪の色だね」


「ゆきのいろ?」


「うん」


しゃがんで目線を合わせると、六花は小首を傾げた後でニッコリと笑った。


「じゃあ、パパのいろだね!」


六花が声を弾ませた直後、それに応えるかのように海から風がフワリと吹いた──。