何て切ないんだろう……。


あたしの事をわからないでいる雪ちゃんが、混濁する記憶の中ではあたしの事をちゃんと愛してくれている。


あたしの事を忘れてしまっても、彼の心の中にあるあたしへの想いは色褪せていないのかもしれない。


それは、言葉にならない程に悲しくて……。


だけど、言葉に出来ない程に嬉しい事だと思った。


滲む視界の中にいる雪ちゃんが、悲しげに笑っている。


あたしは涙を堪えられないままだったけど、ゆっくりと瞳と口元を緩めて笑って見せた。


それが、今のあたしに出来る、精一杯の笑顔だった。