その“ごめん”の意味を問う暇も無いまま、雪ちゃんは瞳を閉じてしまった。


その瞬間に心臓が跳ね上がったけど、すぐに聞こえて来た寝息にホッとする。


だけど……。


涙を止める事も、触れる程度に絡まったままの小指を離す事も出来ずに、声を押し殺して泣き続けた。


脳裏に浮かんだのは、さっき見た綺麗な海。


例え、あの景色よりももっと綺麗なものを見られたとしても、雪ちゃんがいないのならきっと何の価値も無い。


「嫌だよ、雪ちゃん……」


彼の頬を伝う涙が、小さく呟いたあたしを窘めているように見えた──。