温かくて優しいその時は、これから待ち受けている運命を忘れてしまいそうになるくらい幸せだった。


だけど……。


現実は、やっぱりそう甘くは無い。


婚姻届を提出した翌日、雪ちゃんはおじさんに支えられてリビングに移動する途中で、意識を失った。


数分もしないうちに目を覚ましたものの、今度は記憶が混濁していて……。


その時から、それは症状の一つとして度々出るようになってしまった。


雪ちゃんは、あたしやおじさん達の事もわからなくなる事があって、その時は彼の記憶が鮮明になるまで不安で堪らなかった──。